「夜に踊るアネモネ」終演しました ~いろいろ振り返り~ (槻市灯代)」

こんにちは初めまして、

槻市灯代と申します。劇団員の茶々に「お前の文章をサイトに載せるから文章よろぴく^^文章の硬さとかは任せるお^^」という依頼が来たので、正々堂々と適当な文章を書いて送ろうと思い、凝った肩をおさえながらこの文章を書いています。

とはいえ彼女に「公演終わりましたっぽいことを言ってくれ」という指定を受けてしまったので、実家の文鳥のほっぺが最近汚いという話はやめて、ちゃんと公演の話をします。


「夜に踊るアネモネ」終了しました!!!!!

わーい!!!ドンドンパフパフ!!!

いやーーーーーーーーーーーー


疲れた~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ほんと疲れた。

もう、

「終わったぜ~ひゃっふい!!」

とか全然なくて、

「は?終わったの?……へぇ……」

って感じです。


まぁ、何がしんどかったって、

結局脚本書くのが一番しんどかったですよね。結局68ページ?になったんですかね?

販売用台本はト書きのところの行を詰めたりして紙の枚数が少なくなるように調整しているので少なめになってますが、

実際稽古場で使っていたものはそのぐらいになります。使用した脚本は「夜に踊るアネモネ第7稿」です。アネモネだけで6回アップしなおしています。


もっと言うならば、この作品の前身になる脚本「アイウリヤ」というものがございまして、そちらも第3稿ぐらいでボツにして、

その次に書いた「踊り狂え」という作品は一回完成させたところを全ボツになっているので、

もうアネモネまでに何文字、何作品打ったかとか覚えてません。

現在私のパソコンには似たような名前のWordファイルが死ぬほど並んでいます。ちなみに、この「アイウリヤ」という作品、個人的には結構完成度高いと思ってます。

アネモネで出てくる「秋本アイ」の前身になるキャラクタが、街中のいろんな人を幸せにしていくんだけど、その関連のないように見える各パートのキャラク タが実は一人の人物に繋がっていて、各個人の幸せが全て特定の人物の不幸に繋がる、という話です。

結構よく出来た話だと思いますが、半分自分でボツにしました。テーマ性が無かったし。

いつか改変してどっかでやるか、公表したい。

さて本編ですが

見てもらった人にはお分かりだと思いますが、「秋本七瀬と名乗る、秋本アイ」が出てきます。

これが実にややこしい。何がややこしいって、人に説明する時がややこしい。

「中身が秋本アイで、見た目が秋本七瀬」

とか

「中身が秋本七瀬で、見た目も秋本七瀬なんだけど、この時点ではお客さんは誰かわかってない人」

とか、

「中身が秋本アイ で、見た目が秋本アイで、

実際秋本アイなんだけど、お客さんからしたら秋本七瀬」

とか、もっと言うならこのトリックにもいろんなパターンがあったので

「中身が秋本アイで周りからは秋本七瀬と言われてて、見た目が秋本七瀬(しかしこの見た目はお客さんには秋本アイだと思わせる)」

とか

「秋本七瀬を名乗っているけど中身は秋本アイだが、もう七瀬は死んでいるので実質秋本七瀬」

とか

「見た目秋本アイ(お客さん的には七瀬)が

臓器移植をして七瀬の性格を取り込み始めているのでもうどちらか分からない」

とか、ずっとそんなことを考えてると

「秋本七瀬って……なに?」
「名前をつけることに意味があるのか……?」
「人……とは……?」

みたいな話になってきます。

キャラクタにつく修飾語が多すぎて主語の次まで話が進まない。

劇団員のキシと話していても

キ「え?結局これは秋本どっちですか?」

槻「これは秋本アイ」

キ「でも七瀬なんですよね?」

槻「だって七瀬って名乗ってるもん」

キ「でも七瀬、もう舞台上にいますよね、実際演じる時どうするんですか?」

槻「いやだから、これはアイやからアイ役の人が演じるよ」

キ「でもお客さんには七瀬って思わせないと駄目なわけですよね?」

槻「だから、七瀬って名乗らせるし、過去では名前を出さないんよ」

キ「え?過去で名前を出さないというのは?」

槻「だから過去では七瀬、アイっていう名前は一回 も出さず進めるから、お客さん的には七瀬と名乗っているアイ(アイ役が演じる)の事を七瀬だと勘違いして……」

「「タバコ吸おうか」」


ずっとこんな感じでした。

いやそもそも、上にも書きましたが、アネモネの前に2作品くらい書いてたんですよ。

「アイウリヤ」はもちろん、アネモネの前身になる「踊り狂え」という脚本がありまして。

これ、〆切の三月末に完成させてたんです。

なんで三月末にしてたかっていうと、4月~5月頭まで、会社の繁忙期になるんですね。

当初の予定としては、

3月、作品を完成させる僕

4月、劇団員が作品をべた褒め、意気揚々と繁忙期に向かいつつ 、キャスティングする

5月、繁忙期を終えた私、キャスティングも終える

6月、ギリギリまで改訂した完璧な脚本を持って稽古に向かう

でした。完璧ですね。

でも実際は、

3月、作品を完成させる僕

4月、全ボツ、書き直す

5月、書き直す

5月末、ギリギリでキャスティングを終える

6月、スライディングで完成させ、稽古開始

でした。


全編書き上げた脚本ですが、添削してくれた蒼井とキシに


「これは……面白くない!」


との評価をいただきました。(ドカン)


ここで説明しておきたいのですが、


カタアシイッポの脚本は、基本的には私槻市がひたすら書き、

キシと蒼井がひたすら添削するという、


分業(?)制をとっています。


なので、僕はひたすらアイディアを出し、

二人がひたすら読み、ひたすら駄目だしをしてくれる、という流れで制作しています。


この時、僕が自分で決めているルールは、

「添削の際は二人に従う」

ということでして、


まぁ自分がそもそも脚本を客観視できないというのもあるのですが、

二人に見てもらって、「面白い」という言葉をもらって、ようやく世に出せるのです。


逆に言えば、どれだけ自分が頑張って書こうが、

二人が「面白くない」と言えばそれは面白くないのです。

それほどに二人の目は正確で絶対……。


そんなわけで、劇団員二人の意見により、

僕が生み出した「チーズナン作りが得意なムハンマド君」「喫茶「潮騒カフェ・山の恵み」を営むオカマオーナー」など個性豊かなキャラクタ達は無残な死を迎えたわけです。


もうそこからは地獄ですよね。

迫る締切、面白くない脚本。

考えても考えても、まぁアイディアの出ないこと出ないこと。



極限状態で話考えても何も出るわけないんですよ。パソコン向かってもなんにも進まないわけだから、気分転換に部屋にクイックルワイパーかけるんですけど、どれだけ時間が経とうが、部屋がきれいになるだけなんですよ。(クイックルワイパーをかけていたため)


二人に

「この映画参考になるよ!」

と言われたら血眼になりながら見て、

「こんなんどう?」

と言われた案をとにかく盛り込んで、

それでもできないのでしまいには全劇団員に相談しまくって、

結局は全員の力でやっとこさ完成させました。

情けないですが、頼れる人がいるのはとてもいいことです。(言い訳)


ここまで前座です。

ブログとかって、ある程度僕たちに興味持っていただいてる人が見てくれてると思っているので、もう超長文書いちゃいますよ。ここからはせっかくなので、本編の振り返りをしていこうと思います。

稽古場の空気感を中心に。

始まるよ。


●1場

アイちゃんと七瀬ちゃんが二人で座って話すシーンですね。

ここに、「このアーティスト、オーディションでデビューしたんだって」

というセリフがありましたが、このセリフのせいでめちゃくちゃ困りました。

「オーディションでデビューして」

「シーンにも合っていて」

「みんなが分かるけど」

「特定の時代を連想させない」

「でもちょっとノスタルジー」

そんな曲を探さないといけなかったのです。

音響担当のねこしまさんに

「そんな曲を探してちょうだいよ」

と言ってみたら、さすが彼女ですよね。

見つけてくれました。

Daydream Believer/The Monkees

https://www.youtube.com/watch?v=xvqeSJlgaNk 

これじゃぁあああああああああ!!

ちなみにこれが見つかるまで、七瀬役の玉井さんはいろんな歌を歌ってくれていました。

でも何を歌ってくれていたかは全く覚えていません。なんだっけ?

ちなみにこのシーン、演じてくれていた時に、すごくイメージと合っていて、

「すごくいい!すごくいいよ!なんかね、その、ちょっと夢っぽい、ふわふわしてる感じがとてもいい!」

と言ったら、アイちゃん役の上西さんに

「それこの前あんたが指示したんすよ」

と言っていました。フィーリングが合ってるわけではなかった。

そのあとに小声で彼女は

「これ言わずに自分の手柄にしたらよかった…」

と言っていました。

●2場

記者の登場に始まり、ゲンちゃんと桃花のシーンですね。

冒頭に記者が飴を桃花に渡したり投げたりするくだりがあるんですけど、

小道具がまだ無い時にマイムで飴を投げたりしていたので

小道具が出てきて初めて、

「投げた飴が終演まで転がったまま」

という事態に気付きました。

「あれ?これ飴ってどこで片づけるっけ?」

と、えるしおん。さんに聞くと

「転がったままですよ。終演まで」

という切ない言葉が返ってきました。飴ちゃんよ、気付けなくてごめん。そのあとスタッフがおいしくいただきました。

ゲンちゃんと桃花のシーンで面白かったのは、「奥の部屋いこ?」のところです。

男女カップルが寝室に行き、奥で花火が打ちあがるという最低な演出でしたが、

僕が

「「奥の部屋いこ?」のセリフ、もっとエロく!!」

と指示すると、えるしおん。さんは

「…………、わっ、かりました。」

と一言。

この返答までの間がめっちゃ面白かったのを覚えています。

目つぶしのシーンの練習では、「どう動いたら一番目がつぶされやすいか」

という、半端ねぇ話し合いが行われていました。警察呼ばれるぞ。

ちなみにこのシーンで一番評判が良かったのは

親達「その目!!!」

というセリフでした。なんでそこ?



●3場

喫茶店のマスターのとこですね。

劇団員のきむらさとふみと、

大学から一緒にやることが多かった上西さんとでアットホームな空気が多かったことを覚えています。二人には随分と甘えてしまいました。

途中いろんな客がきて店が繁盛していく、というシーンがあったのですが、役者さんたちが本当に「いろんな客」をしてくれました。

個人的にツボだったのは、大月航くんがやった「なんだか仏教的なものにはまっている人」でした。来店時なぜか釈迦のポーズをしていたので

「なんで釈迦ポーズしてたの?」

と聞くと

「なんだか今日は仏の気分でした」

と答えてくれました。ボツにしました。

途中で出てくる

「あぁ、ジョークか」というきむらさとふみの演技が、何回やっても面白かったです 。

彼はあぁいうセリフを自然に面白く発するのがとてもうまい。「こうやったら面白くやってくれるだろうな」と思って書いて見事にはまるのがとてもうれしいです。

ふろむさんの一人劇場は最初からかなり完成されてました。彼女は本当に演出がやってほしい事を分かってくれる役者さんです。尊敬。

●4場

アイの親子がグエェ~~~ってなって、お姉ちゃんとの仲が悪くなっていくところですね。

この「グエェ~~~~~」の世界観の共有が案外難しくて、役者さんたちの動きを合わせるのを頑張った覚えがあります。

途中でコーチが起き上がり、お姉ちゃんを連れて行ってしまうというシーンがあるのですが、その時にコーチ役のななしのけーたが、やけにドゥルドゥルっとジェルっぽく起き上がるので「なんかゲルっぽくない?」と聞くと「そうです、コーチはゲルっぽく起き上がります」と言ってきたので、

「コーチはゲルではないので普通に起き上がってください」

とオーダーしました。ちょっと残念そうな顔をしていました。ここで記者がアイの頭をなでるシーン、僕的超推しシーンです。

●5場

アタリちゃんが会社で馴染んでいくところですね。もうここはとにかく遊びまくり、緻密に音ハメで動き、動きをそろえるか

という、段取りと音ハメ地獄でした。

小道具も結構出てくるし。あんなに真面目なコーチがめちゃくちゃ踊るし、あんなにおとなしかったマスターがめっちゃセクハラするしなんか知らんけどこの二人がめちゃくちゃ評判良かったです。楽しそうでなにより。モブやってるときってめっちゃ楽しいっすよね。

会社に潜入するムービングのシーン、めちゃくちゃ練習しました。めちゃくちゃ練習した上に現場に入ったら裏を回りきれなくて直前で振りを変えたりしたので、負担は計り知れなかったと思います。

でも面白かった…でしょ……?

僕はあぁいう動きを考えるのが一番好きです。あぁいう演出が好き。

ちなみにあのシーン、ちょこちょことアイちゃんが出てくるのですが、僕は一切振りを指定してないです。上西さんが、全体の振りを把握した上 で、「あ、ここ出られるな」と思ったところで出てくれてたんです。

すごすぎ。

アタリちゃんは最後にサイリウムとうちわを持ってくるんですが、小道具どうしようかなと考えてた時に「私持ってくるっすよ」

と言って、佐々木瞳さんが自分で用意してくれました。

「こんなんでいいすか?」

と現物を見せられた時、面白すぎて膝から崩れ落ちました。

あ、ちなみにドローンを動かしていたのは七瀬役の玉井優樹さんです。表に出ていない時は誰でも雑用。

●6~7場

ラストスパートにかけてシリアスなので、あまり面白い話はない気がします。ただ、ラスト暗転前、どの警察が銃を撃つか?という話になった時に、

「正直撃ちたいです」

ときむらさとふみが言っていました。

立ち位置的にきれいだったので実際に彼が撃ちました。やったね。

あ、そういえば終盤フォトフレームをみんなが持ってくるシーン

あの額縁200円で買ったんですけど

一回落としたら半分ぐらい割れました。

補強して使いました。

~~~~~

そうやって出来た「夜に踊るアネモネ」ですが、いかがでしたでしょうか。

僕はとても面白かったと思います。

だってみんなで頑張ったもん。

カタアシイッポとして、一つの区切りとなる公演だったと思います。

今の我々にできる最高でした。

満席の1stの客席と、終演後の面会スペースの暖かさが、頑張ったご褒美でした。

これからもカタアシイッポはいろんな活動をしていくつもりですので

「なんだかおもしろい奴らだな」と思っていただければ嬉しいです。

また近いうちにどこかで!!

(舞台撮影:松田ミネタカ)

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